【ミラヴェルカ戯殞賤誓術】
(ブルライト地方)- 入門条件
- デーモンルーラー技能&“魔神の尖兵”の獲得(人族社会)/50名誉点の支払い(蛮族社会)
現在から百五十年ほど前、ミラヴェルカという名の女性が、魔法学園「七色のマナ」の門を叩きました。
ミラヴェルカはナイトメアであり、それゆえの差別的な視線を苦にして故郷を出奔し、ユーシズを訪れていました。行き先がユーシズであった理由は、ひとつには多様性を認める国風に希望を見出したため、もうひとつには他者に侮られないための実力を求めて魔法を学ぶためだったと考えられます。
ミラヴェルカは、魔法学園の中でもデーモンルーラーの技を専門とする、召異魔法学科へと入学しました。
召異魔法学科は所属する者がごくわずかであり、対人関係を厭ったミラヴェルカがそこを選ぶことは自然といえば自然でしたが、この選択はかれの運命を大きく左右するものでした。
優れた魔法適性と勉学の才を有したミラヴェルカは、召異魔法学科で無事に三度の進級を果たしました。
ところが、その頃のミラヴェルカは、己が学んでいる内容に不満をいだいていました。
人族社会において学べる召異魔法の体系は、危険性をできうるかぎり抑制し、安全性を最大限に重視したものとなっています。召異魔法の内包する危険をかんがみれば、これは至極真っ当なことではあるものの、他の魔法系統にくらべると不自由がつきまとう向きは否めません。
この不自由について、ミラヴェルカは強い不満をかかえていました。そして、より自由で強力な力を求めて、学園に籍を置きながらも併行して独学をはじめました。
ミラヴェルカは、諸外国にある図書館なども活用し、多くの古文書にあたりました。
もとより才覚のあったかれは、それらの記述と己の感性を頼りに、ついに召異魔法の強力な技法を編み出します。それがこの、【戯殞賤誓術】です。
この【戯殞賤誓術】は、通常の召異魔法の真逆を行き、むしろ魔神が解き放たれる危険性を積極的に許容します。それを誓約とすることで、異界から多くの魔力を引き出し、より強力な魔法行使を可能とするものです。
もっとも、戦闘中に魔神を完全に自由にしてしまっては、その場で術者の不利をまねかれる可能性も大いにあり、本末転倒です。そこでミラヴェルカは、「術者が死ねば、魔神は解放される」構造を逆手にとり、「術者が死ぬ危険性を高める」ことで、魔神解放のリスクを盛り込みながらも、ただちには魔神に邪魔されない――という詐術じみた論法で術式を成立させました。
術者が命を落とした後は、むろん魔神が自由になりますが、そのときには(あたりまえですが)術者はすでに死んでいます。「死んだ後のことなどはもはや知ったことではない」という開き直りが、この発想を可能としました。
かように独自の術式を開発したミラヴェルカは、それからほどなくして、魔法学園を中退しました。
それから十数年後のこと……ミラヴェルカは、いずこかの蛮族コミュニティにおいてダークナイト――蛮族に帰依したナイトメアのことです――となっていました。
そして、蛮族コミュニティ内に、みずからの編み出した術式を広めつつありました。
ミラヴェルカが何を思ってそのような立場についたのかはわかりませんが、現実として、【ミラヴェルカ戯殞賤誓術】をあつかう蛮族は増えつつあります。
現在では、コミュニティでその技を知ってから“はぐれ者”となった蛮族などもいくらか発生しており、蛮族コミュニティの外で【戯殞賤誓術】を目にする機会も、稀ながら存在します。
人族社会に属するキャラクターの入門
この流派は、上記のように魔神解放の危険性を大きく孕むものであり、人族社会においては身勝手で有害なものとみなされます。そのため、この流派に入門すると、悪評魔神使い称号の“魔神の尖兵”(⇒『ML』29頁)を得てしまいます。すでに悪評魔神使い称号を有するキャラクターが入門する場合には、代わりに「入門時点で有する悪評魔神使い称号の不名誉点の値+150」点の不名誉点に相当する悪評魔神使い称号を得ます(例:“魔域の増幅者”(100不名誉点)をもつキャラクターが入門するならば、100+150=250点相当の、“悪徳の担い手★”を得ることになります)。
流派装備
この流派では、流派アイテムもまた、危険性をともなう品となっています。そのため、人族社会での入手には、不名誉点の獲得をともないます(詳細は、個別のアイテムデータを参照してください)。
名称 | 知名度 | カテゴリ | 価格 | 概要 |
---|---|---|---|---|
殞落のブローチ | 16 | 装飾品:任意 | 2,000 +特殊 | 弱点の倍加と引き換えに、召異魔法の魔力+1 |
秘伝
この流派の秘伝はすべて、デーモンルーラーとして魔神を召喚し使役しているあいだにかぎり、宣言できます。
ただし、秘伝を適用する魔法は、召異魔法でなくともかまいません。
《ペララスキャストⅠ》
《ペララスキャストⅡ》
- 必要名誉点
- 20
70
- タイプ
- 《バイオレントキャストⅠ》変化型
《バイオレントキャストⅡ》変化型
- 前提
- デーモンルーラー技能3レベル
《ペララスキャストⅠ》デーモンルーラー技能13レベル
- 限定条件
- 召喚中の魔神のレベル以下の魔法、「抵抗:半減」
- 使用
- 魔法使い系技能
- 適用
- 1回の魔法行使
- リスク
- なし
- 概要
- 抵抗失敗時のダメージ+3/+6。抵抗に成功されると習得者が確定ダメージを受ける
- 効果
敵の血を供物とする誓約をあらかじめ結び、強力な魔法を行使します。
この秘伝は、魔神を召喚し使役しているあいだにかぎり、“使役している魔神のレベル以下のレベルをもつ、「抵抗:半減」の魔法”の行使において宣言できます。
その魔法は、抵抗に失敗したキャラクターに対しては、追加ダメージを加えます。
ただし、抵抗に成功したキャラクター1体ごと、習得者は誓約違反としてHPに確定ダメージを受けます。このとき、複数の部位をもつキャラクターが抵抗に成功したならば、その欠損していない部位数に等しい数のキャラクターが抵抗に成功したものとしてあつかいます。
具体的な追加ダメージと確定ダメージの量は、次のとおりです。秘伝 追加ダメージ 抵抗1体あたりの確定ダメージ 《ペララスキャストⅠ》 「+3」点 「3」点 《ペララスキャストⅡ》 「+6」点 「6」点
《スキャッターキャスト》
- 必要名誉点
- 30
- タイプ
- 《魔法制御》変化型
- 前提
- デーモンルーラー技能7レベル
- 限定条件
- 召喚中の魔神のレベル以下の魔法、貫通 or 突破
- 使用
- 魔法使い系技能
- 適用
- 1回の魔法行使
- リスク
- なし
- 概要
- 自身を巻き込むことと引き換えに、他のキャラクターが効果を免れづらくする
- 効果
己の身を効果に晒すことと引き換えに、より逃れがたいかたちで魔法を行使します。
この秘伝は、魔神を召喚し使役しているあいだにかぎり、“使役している魔神のレベル以下のレベルをもつ、「形状」が「貫通」または「突破」の魔法”の行使において宣言できます。
その魔法では、習得者=術者を対象から除外できず、習得者は1dを振ることもなく必ず効果を受け、そして抵抗できません。また、「形状:突破」であっても、「視点近傍の除外」をおこなえません。
〈測量のワンド〉(⇒『ET』127頁)の効果を受けた魔法行使や、召異魔法【バーストゲート】(⇒『ML』39頁)などで、効果範囲の始点と終点が特殊な場合、習得者が範囲内に含まれるかたちで行使するのでなければ、この秘伝は効果をもちません。
それと引き換えに、効果が通過する範囲内の、習得者以外のキャラクターはすべて、「(1dの)出目が1~5ならば効果を受け、6ならば受けない」ものとして、効果を受けるか否かを決定します。このとき、〈幸運の羽根〉(⇒『Ⅱ』269頁、『ET』149頁)のような、貫通・突破を免れやすくなる効果を受けているならば、「1~4ならば受け、5~6ならば受けない」とします。
この秘伝は、習得者がその魔法の効果を無効化できる場合には、効果をもちません。たとえば、“[剣の加護/炎身]によって炎属性のダメージを受けないキャラクターが、炎属性の魔法を行使する”ような場合には、無効です。
《ディアボリックキャスト》
- 必要名誉点
- 50
- タイプ
- 《ダブルキャスト》変化型
- 前提
- デーモンルーラー技能11レベル
- 限定条件
- 魔神召喚中
- 使用
- 魔法使い系技能
- 適用
- 1回の魔法行使
- リスク
- HP回復無効
- 概要
- HP消費と引き換えに、《ダブルキャスト》のレベルの制約を緩和する
- 効果
命を供物として、強力な魔法を立て続けに行使します。
この秘伝は、魔神を召喚し使役しているあいだにかぎり、宣言できます。
基礎特技の効果を踏襲しつつ、追加で行使できる魔法が、「本来行使できるレベル、ランクの半分」ではなく「召喚している魔神のレベル以下のレベルの魔法」となります。魔力が-10される点は、基礎特技に同様です。
ただし、追加で行使する魔法は、その「消費」に、MPと同点のHPが追加されます(例えば、【ブランチ】(⇒『ML』36頁)であれば、「消費:MP10&HP10」となります)。【ブラッドミスト】のように元からHPを消費する魔法は、そのHPの消費量にMPの消費量を加算します(【ブラッドミスト】であれば、「消費:MP5&HP10」となります)。その魔法に《魔法拡大/**》を適用するならば、HP消費も倍加されます。
この秘伝は、基礎特技と異なり、「リスク」をもちます。宣言から10秒(1ラウンド)のあいだ、習得者に対するHPの回復効果は、すべて無効化されます。