【願望詠みの縷述士】
(ユーシズ魔導公国、ハールーン魔術研究王国など)- 入門条件
- 50名誉点
魔法の行使には、おしなべて発声が必要です。その中でも、奈落魔法が要求する発声は、他の系統とはいささか趣を異にします。それは、口にする内容が“術者の願望”であり、さらに“相手が存在しない”点です。前者の点で定型の呪文や起動語が要求される古代語魔法や魔動機術と異なり、後者の点で神々・妖精・精霊に語りかける神聖魔法・妖精魔法・森羅魔法と異なる、ということです。
とどのつまり、奈落魔法の行使に際して口にする願望とは、術者みずからのイメージを明確化するために存在するものなのです。しいて言うなれば、“語る相手は自身である”とも考えられます。
そのうえで、多くの奈落睨士は、一言から二言ほどの端的な言葉で魔法を発現します。とくに戦闘中のような切迫した状況で、これは顕著です。熟達した術士ほどこの傾向は強まり、達人ともなれば“爆ぜろ”や“轟け”のように、ただ一語のみで大規模な魔法現象をも引き起こします。戦闘においては素早く結果を得るのが重要ですから、これは当然の傾向です。
しかし、あえて願望を長大かつ仔細に口述することで、通常よりも強力な魔法をあらわす試みもなされています。一例を挙げるなら、ただ一言「爆ぜろ」と告げる代わりに、「黒焔よ、渦巻きて空を裂き、虚を喰らいて、終焉へ爆ぜろ!」のほうが、より強大な魔法現象を発生させられる――というものです。ともすれば荒唐無稽に思われるかもしれませんが、奈落魔法の要が“イメージ”であることを思えば、不思議ではありません。当事者たちは、このアプローチを“縷述”、それをあつかう者を【縷述士(ディスクリプタ)】と呼称します。
“縷述”で語る言葉に、きまったかたちはありません。術者ごとに異なっているのは当然で、同じ術者でもその時々で内容が変化することもままあります(このあたりは、神聖魔法や妖精魔法と同様です)。ですが、でたらめでよいというわけではありません。術者みずからを昂揚させ、めざましい結果を確信しうるだけの口上が必要です。これにはある種の芸術的な素養が必要であり、縷述士は概して芸術的または文化的な職能をもっています。とくに高い適性を示すのは、作家や語り部、そして吟遊詩人などの技能を有する者たちです。
この技術の追究は、実戦に身を置く奈落睨士たちと、一部の魔法研究者たちによってなされています。前者は冒険者同士のネットワークが母体であり、後者からはユーシズ(⇒『Ⅰ』383頁)やハールーン(⇒『Ⅲ』295頁)といった高度な専門機関に籍を置く者たちも参画しています。【詠唱音節解体学トロッケル研究室】とは、異なる魔法系統を専門としながらも似た領域をあつかっているということもあり、相互に技術交流がなされています。
実戦からのフィードバックと意欲的な研究の好循環により、近年では急速に発展しつつあります。とはいえ、奈落睨士の絶対数が少ないことから、サンプルがどうしても偏る傾向にあることを研究チームは嘆いてもおり、常にあらたな入門者を探しています。
変更履歴
- 2025-11-17 17:48
- 《無碍なる異才の綺想》のレベル・ランクに関わる制約で、さらに当該系統の行使可能レベル・ランクを参照するようにしました。これは、主に特殊妖精魔法を意識した、安全上の理由による変更です。
- 2025-11-17 17:43
- 《願望詠みの縷述》の「限定条件:詠唱専念」の定義を変更しました。従来に加えて、あらたに「主動作」と「魔法行使」が、(呼吸や発声の有無を問わず)全面的に禁止されるようになっています。この変更は、安全上の理由によるものです。
- 2025-11-12 19:41
- 《願望詠みの縷述》の「C値-n」効果のクリティカル値下限を、「7」から「8」へと修正しました。従来の記述は誤植です。
- 2025-11-12 19:40
- 《願望詠みの縷述》の「ダメージ+n」効果を、ダメージのみに有効であると明記しました(回復効果には適用されません)。
- 2025-11-12 19:38
- 《無碍なる異才の綺想》のレベル・ランクにかかわる制約で参照する値を、当該系統の技能レベルから、アビスゲイザー技能レベルに改めました。これにより、高レベル・高ランクの魔法を行使するにはアビスゲイザー技能をさらに高いレベルで習得していることが必要となります。
- 2025-11-12 18:00
- 初版
流派装備
この流派の要諦は、本人の素養による縷述にあり、特殊な器具などは存在しません。
秘伝
《縷述素養》
- 必要名誉点
- 20
- タイプ
- 常時型
- 前提
- 適性技能いずれかの習得
- 限定条件
- なし
- 使用
- ―
- 適用
- ―
- リスク
- ―
- 概要
- 適性技能にもとづいて「縷述強度」を定める
- 効果
この流派の他の秘伝をあつかうには、縷述についての素養が必要です。その素養の程度をこの秘伝によって決定します。
縷述の素養は、詩句についての感性を養ったり、修辞法について学んだりすることで高められます。ゲームにおいては、「適性技能」(後述)を習得していることで、そのレベルに応じて「縷述強度」が決定されます。
複数の「適性技能」を習得している場合、技能ごとに「縷述強度」をもとめ、そのうち最も高いひとつの値が、他の秘伝から参照される「縷述強度」となります。適性技能
適性技能には、冒険者技能のほかに、一般技能(⇒『ET』55頁)も多く含まれます。
各適性技能には、適性の度合いに応じて、「B」「A」「S」「SS」の四段階で適性ランクが定められています(SSが最優です。なお、「A」以上の各ランクには、冒険者技能と一般技能の一方しか存在しません)。GMは、後発の技能や独自に作成した技能などについて、いずれかのランクに属するものと裁定してもかまいません。適性ランクB
- 冒険者技能
- ソーサラー、コンジャラー、セージ
- 一般技能
- ウィッチドクター、グレイブキーパー、ノーブル、パフォーマー
適性ランクA
- 冒険者技能
- 該当なし
- 一般技能
- クレリック、シンガー、スクライブ、フォーチュンテラー
適性ランクS
- 冒険者技能
- 該当なし
- 一般技能
- オーサー、コーティザン、ストーリーテラー
適性ランクSS
- 冒険者技能
- バード
- 一般技能
- 該当なし
縷述強度
適性技能の「適性ランク」と技能レベルに応じて、次のとおり「縷述強度」が定まります。なお、PCが一般技能を5レベルを超えて成長させるためには、『RL』掲載の拡張ルール(⇒同書47頁)が必要です。
縷述強度は、流派内の他の秘伝から参照されることによって意味をもちます。適性ランク 技能レベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 B 1 2 3 A 1 2 3 4 S 1 2 3 4 5 6 SS 1 2 3 4 5 6 7 8
《願望詠みの縷述》
- 必要名誉点
- 30
- タイプ
- 主動作型
- 前提
- 《バイオレントキャストⅠ》
- 限定条件
- 戦闘中、詠唱専念
- 使用
- 魔法使い系技能
- 適用
- ―
- リスク
- ―
- 概要
- 奈落魔法を強力に行使する。他の呼吸・発声と排他
- 効果
魔法の行使に際して長大な言葉を連ね、より精緻に願望をイメージし、強力な効果をあらわします。
この秘伝は、「限定条件:詠唱専念」です。これは、“主動作、魔法行使、呼吸が必要な行動、発声が必要な行動を、手番内で他にいっさいおこなわない”という意味です(なお、呼吸が必要な行動には「練技」等、発声が必要な行動には「鼓咆」や“合言葉”を要求するアイテムの使用等が該当します)。手番中にそうした行動をとっていたらこの秘伝は使用できず、この秘伝を使用した後にそうした行動をとることもできません。
また、戦闘中以外は、この秘伝を使用できません(非戦闘状況での魔法行使は、このような秘伝をもちいるまでもなく、すでに十分にイメージを固めていると考えてください)。
この秘伝の効果として、行使可能なうちから任意の奈落魔法をひとつ選び、行使します(これは主動作による魔法行使としてはあつかいません(補助動作での行使になる、という意味ではありません。このことは、戦闘特技《マルチアクション》の宣言を不可能にします))。
習得者の「縷述強度」に応じて、次の効果を得ます。縷述強度 効果 1 ダメージ+1 2 ダメージ+2 3 行使判定+1、ダメージ+4、判定1ゾロ無効 4 行使判定+1、ダメージ+6、判定1ゾロ無効、威力1ゾロ無効 5 行使判定+2、ダメージ+8、判定1ゾロ無効、威力1ゾロ無効 6 行使判定+2、ダメージ+10、C値-1、判定1ゾロ無効、威力1ゾロ無効 7 行使判定+3、ダメージ+12、C値-1、判定1ゾロ無効、威力1ゾロ無効 8 行使判定+3、ダメージ+15、C値-2、判定1ゾロ無効、威力1ゾロ無効 以下は各効果の補足です。
- ダメージ+n
- 「抵抗:半減」の場合、半減の後で適用します。ダメージにのみ有効であり、回復効果には適用されません。
- 判定1ゾロ無効
- 魔法行使判定のサイコロが1ゾロであったとしても、自動失敗としてはあつかわず、出目を「2」として達成値をもとめたうえで処理を継続します。
- 威力1ゾロ無効
- 威力表のサイコロが1ゾロであったとしても、表の値を「0」として処理を継続します。
- C値-n
- 7以下にはなりません。
《完全なる典麗の夢想》
- 必要名誉点
- 50
- タイプ
- 常時型
- 前提
- 《ルーンマスター》
《ダブルキャスト》 《願望詠みの縷述》
- 限定条件
- 《願望詠みの縷述》
- 使用
- ―
- 適用
- ―
- リスク
- ―
- 概要
- 《願望詠みの縷述》での魔法行使に、宣言特技ひとつを追加で宣言できる
- 効果
願望を具体化する言葉の中に特殊なキーワードや意図を含め、魔法の性質を変化させます。
《願望詠みの縷述》による奈落魔法の魔法行使にのみ効果のある秘伝です。
その魔法行使では、習得しているうちから“「使用:魔法使い系技能」かつ「適用:1回の魔法行使」”の宣言特技(ならびに宣言型の秘伝)をひとつ、宣言回数に数えることなく宣言できます。
《無碍なる異才の綺想》
- 必要名誉点
- 100
- タイプ
- 主動作型
- 前提
- 《魔力強化Ⅱ》
《完全なる典麗の夢想》
- 限定条件
- 発声
- 使用
- 魔法使い系技能
- 適用
- ―
- リスク
- ―
- 概要
- 他系統の魔法を強力に行使する。他の呼吸・発声と排他
- 効果
この流派の極意を応用し、他系統の魔法においてもイメージによる強化を図ります。
この秘伝は、以下の三点を除いて、《願望詠みの縷述》と同様の効果をもちます。
- 任意の系統の魔法を行使できます。
- 行使できる魔法は、「“アビスゲイザー技能レベルと、その魔法系統で本来行使可能なレベル、ランクのうち、より低い一方”の値より2以上低いレベル、ランク」のものにかぎられます。
- 魔法の行使においては、かならず発声が必要です([異貌]中のナイトメアなどであっても、発声を免れることはできません)。
(なお《完全なる典麗の夢想》は、あくまでも《願望詠みの縷述》にのみ有効な秘伝であるので、この秘伝には効果がおよびません)